1週間まえの8月24日、和泉宏隆さんのトリビュートアルバム『Unforgotten Saga/和泉宏隆&フレンズ』が発売になりました。その時に書こうと思いながらも、日々のあれやこれやでなかなか時間がとれていなかったところへ、いま大流行のアレを何処からか貰ってしまい、演奏とかリハーサルとかレッスンとかに行けず、皆様には多々ご迷惑をおかけすることになってしまいましたが、これを書く時間は出来ました。このご時世、一事が万事、前向きにとらえてゆかねば。
生前の和泉さんがスタジオ録音に参加した最後の作品は、2021年2〜3月録音の僕のCD『SONGS FROM THE HEART/太田剣 with 和泉宏隆』なのですが、今回のトリビュートアルバムには、これまで発表されていなかった和泉さんのピアノ録音を用いて製作された曲など、4曲の和泉さんの初出音源も含まれていて、「あ、僕のアルバムの後に和泉さんの作品が世に出たんだ」という嬉しい気持ちになりました。和泉さんの曲が今もあちこちで演奏され続けていることに日々感じる継続感が、CDという作品の面でも続いていて、僕の作品で「終わりじゃなかった」という喜びとも言えます。 このアルバムの総合プロデュースを担当された鳥山雄司さんのディレクションは、各曲のサウンドメイキングや曲順など細部にいたるまで行き届いていて流石の素晴らしさ。和泉さんの在籍した二つのグループ、T-SQUARE+PYRAMIDのような夢のサウンドの1曲目【Portrait of Angel】のエンディングでの和泉さんのピアノ、からの和泉さんが敬愛していたLars Janssonさんのソロピアノへの流れなんて感涙モノです。『ヤンソン先生の演奏と並べるのなんてやめてよ〜』なんて空の向こうで言ってそうですが。。収録された曲いずれもが、和泉さんの『フレンズ』の皆様の思いを感じる演奏ばかりです。 僕の演奏はヤンソン先生の次の3曲目(汗)。ライブのMCなどでは話していましたが、今回新録音したこの曲【Northern Island Breeze】は和泉さんと僕との約束の1曲だったことを、アルバムリリースに際して書き記しておこうと思います。 ここ数年、和泉さんがメインアーティストとして出演する中学・高校の芸術鑑賞会に度々参加させていただいていました。プログラム的には、和泉さんのソロピアノに始まり、須藤満さん(eb)がいらっしゃる時はお二人で『Hiromitsu』の演奏、そしてドラムの石川雅春さんが加わって【Northern Island Breeze】(和泉さん曰く『北の島のそよ風』)という流れで、その次の曲から僕が加わってQuartet編成になるわけですが、そんなわけで僕はいつも舞台袖でこの曲を聴きながら「これ、テナーサックスで吹いたらカッコ良いだろうなあ。。」と妄想を膨らませていたわけです。 そして、僕がリーダーのLIVEに和泉さんをスペシャルゲストとしてお迎えした時に「ノーザンアイランドブリーズ、テナーで吹かせてもらってもいいですか?」のお願いを快諾してくれて、それ以来、和泉さんをお迎えするLIVEではQuartetでもDUOでも毎回演奏させてもらっていました。そして件の自分のCD録音の際に、僕としては恐れ多くてお伺いをたてることも躊躇っていましたが、和泉さんの方から『僕の曲もCDに入れてよ〜』と笑いながらおっしゃってくれたので、すかさず「え!いいんですか?」と話が進んだわけですが、その流れならば当然といえば当然の如く、和泉さんは【Northern Island Breeze】テナーバージョンを録るのだろう、と思われたご様子で。このとき僕は、アルトサックス奏者として長年やってきた自分の久々のリーダー作ということで、アルトとソプラノだけで完結したい、という気持ちがあったのと、【Northern Island Breeze】は大好きだけれど、リリースLIVEやツアーで持ってゆく楽器が1つ増えるなあ...というLIVE現場での身体的事情を鑑みたりして、ちょっと悩んだのでした。(電車でテナーとアルトとソプラノとスーツケースを抱えての移動はなかなかヘビーだったりもします。。) この作品のレコーディングの休憩時間に、和泉さん『早く次のアルバムも作ろうよ〜』僕「え!まだこのアルバム全曲録り終えてないですよ(笑)」なんてやりとりもありまして、そんなことから【Northern Island Breeze】は次作に収録しましょうと約束をして、そのレコーディングでは和泉さんが候補として挙げてくれた別の曲【After The Ship Has Gone】と【Love Ballad】を収録しました。 そして和泉さんの旅立ちから1年。トリビュートアルバムへの参加のお話をいただいて、はじめはレクイエム的なオリジナル曲を書いて捧げようかとも思ったのですが、プロデューサー鳥山雄司さんの「しんみりした作品じゃない方がいいかな」というディレクションを聞いて、あ、それならば、と約束だった【Northern Island Breeze】の新録音を提案させていただいたわけです。僕のCDで和泉さんと共にレコーディングし、和泉さんが旅立つ数時間前まで御茶ノ水『NARU』でのレコ発LIVEで一緒に演奏していた西嶋 徹さん(b)と河村 亮(ds)くん、そして昨年5月に無観客配信した和泉さんトリビュートLIVEでも素晴らしい演奏をしてくれた長年のミュージシャン仲間、松本圭司くん(p)を迎えての新録音。昨年和泉さんとレコーディングした日からちょうど一年と二日後でした。作曲者である和泉さんも含めた5人の人生や思いが重なった良いテイクが録れたと思います。 (昨年三月に和泉さんのピアノトリオ“The Water Colors”と共演した【Northern Island Breeze】はこちらの1曲目に→【YouTube】) 和泉さんのお姿と溢れ出るダジャレトークはいま何処に、と、そんな感じの1年4ヶ月が経とうとしていますが、先日初めて招聘されて伺った八丈島ジャズフェスティバルでは、9年前に新設されたホールの柿落としに出演した和泉さんのスピリットを島の皆さんの演奏から感じたり(『北の島』ならぬ『南の島のそよ風』を感じながら、なんて和泉さんなら言うのかも)、4〜5月に開催された『和泉さんを偲ぶ会』では多くのファンの方の思いを受けながら、和泉さんとは一緒に演奏してなかった曲をそのピアノ録音とDUOしたり、今も途切れることなくずっと新たな共演が続いているような感覚です。【Northern Island Breeze】が世に出たことで、約束の一つを果たせたのですが、実はまだ他に『この曲を剣ちゃんのサックスで録音したいんだよね〜』と和泉さんに言われていた曲があと3曲ほどありまして。。 その約束も、少しづつ実現させてゆきますよ、和泉さん。まだまだお付き合いくださいね。 ![]()
by ken_ota
| 2022-08-30 23:37
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