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12.08.12 海から陸へと進化を遂げる間柄

またしばしご無沙汰しておりました。こちら【NOTES】という名のBlog。
暑い日が続いておりますが皆さまお変わりなく元気にすごされていますでしょうか?


前回ここに書き記した6月の東北ツアー後は
7月に単身札幌に飛んでの演奏や、その他いくつものLIVEで演奏を続けておりまして
そうこうしているうちに4年一度のオリンピックも始まり
もうそろそろ閉会式を迎えようかというこのお盆の頃に
あるミュージシャンと初めて共演することになりました。

知り合ってからもうかれこれ6、7年になるでしょうか?
あちらこちらでよく顔をあわせるのですが
ライブで顔をあわせることがなかなか無く
彼と初めてゆっくり長い時間を過ごしたのは昨年11月。
鹿児島の南端、志布志の海のそばにある
海水温泉の海水プールで一緒にジャブジャブ泳いだ時でした。

それから9ヶ月。
生命の進化さながらに
二人で陸に上がって一緒に演奏することになりました。
ずっと気になってて
いつか一緒に演奏してみたいと思っていた
素晴らしいギタリスト、彼の名は「西藤ヒロノブ」。

僕が愛聴している彼のアルバム『The Sea』も
そこここに海の匂い漂う、センス溢れる好盤で
西も北も南も海という渥美半島先端の土地で育った僕の
原体験にも共鳴する何かを秘めたその音楽性とのコラボレーションが
今から楽しみでなりません。

鈴木正人&大槻カルタ英宣という素晴らしいミュージシャンも揃って
さて、どんな音世界を創りあげられるか。

それによって僕自身の音楽人生に
どんな新たな要素が加えられるか

見知らぬ音、見知らぬ景色へのカウントダウン。
あと3日後になりました。

8/15(水)夜7:00はぜひ
横浜みなとみらいの「MotionBlue YOKOHAMA」で
二人の初邂逅に耳を傾け、全身で体感していただければ幸いです。

皆さまのお越しをお待ちしております!
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# by ken_ota | 2012-08-12 03:49

12.06.20 年を重ねた旅の思い出

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早いもので2012年も、もう半分が過ぎようとしていますが
皆様いかがおすごしでしょうか?

四季の変化が美しいとされるこの国の気候も
年々少しづつ変化しているのはここに住む我々には明らかで
そんな中、いつまでも変わらない愛すべき何かを求めたいと思いつつ
それを求めようとすることで自分自身が変わってゆくというパラドックスに
停まることのない時間の流れの宿命を感じるたび
ふと立ち止まってぐるりと1周まわりを見渡してみたくもなります。
自分の立ち位置とか視野の微調整は
前に進もうと踏み出す足の揺らぎを無くす大切な過程だと思いながら。

この6月前半は西へ東へ、いや西へ東北へという感じで
演奏の旅に出ていました。

神戸・滋賀・東広島・岡山・名古屋はハクエイキム君とのDUOで。
仙台・新庄・盛岡・鹿沼へはハクエイ君と川村竜クンと大槻カルタ英宣クンとのQuartetで。

DUOでのツアーは全て、マイクやPA無しの生音で演奏しました。
ピアノとアルトサックス、二人だけだから出来る演奏環境でもありますが
なにより二つの楽器が空間に放つ、音という名の空気の振動が重なったものが
直接そこに居る人の耳や肌に伝わる、ごく自然な音の送受の心地良さと
決めごと無しで臨むことにより、僕とハクエイ君という二人の演奏家の
その時、心から生ずる音楽をリアルタイムで受け止めてもらうという
時空間共有の醍醐味を味わっていただくことが
自分たちの出発点であり最重要命題でもあった
とても意義深い、即興音楽への挑戦の日々でした。

それは今の僕が考え欲している音楽のとても大切な一つのカタチで
その後に東北に行った4人での音楽も、その志向や姿勢という点では
大きくかけ離れるものではなく、同様に探究心あふれる素晴らしいものになりました。

ハクエイキムという特異で素晴らしい世界観を持ったピアニストが彩るサウンドを
当代随一の音色・躍動感・音楽性を兼ね備える川村竜というベーシストと
不可能とさえ思えるほどバーサタイルに数多の音楽への造詣を深めている大槻カルタ英宣というドラマーが
まだ見ぬ景色を描こうとするが如く、巧みに広げてゆき
僕はその映像の上で語られるストーリーの言葉と、伝える声を一つ一つ吟味しながら選んでゆく。

イメージを共有する仲間、皆の
音楽に対して純粋であり続ける心に何の曇りも陰りもないことが
本当に気持ち良く嬉しい、そんな演奏の毎日でした。
1日だけゲストで加わってくれた盟友、小沼ようすけクンの
空気をも変える存在感とプリミティブに人間的な音楽性も素晴らしかった。

両ツアー併せて9公演。訪れた先の各地で
そこに住みながら音楽を愛し続ける多くの方々に大変お世話になりました。
ライブハウスを経営して音楽の素晴らしさを人々に伝え続けてくれる方々、
ライブを企画し宣伝し、何も無い所から一つの尊い夜を創りだしてくれた方々、
そこで僕らの音楽を共有するために足を運んでくれた皆さん。
演奏抜きでもまた会いに行きたい、そういう人たちとのつながりの時間を
多く持てたことが何よりの喜びです。

偶然なんですが、東北ツアー2日目の山形・新庄市でのコンサートの日は
僕の42歳の誕生日でした。
初めて会ったときから隣人のように暖かく迎え入れてくれて
行くたびに故郷に帰ってきたかのような安心感で嬉しくなる新庄FJCの皆さんとバンドメンバーが
僕のメモリアルな日にサプライズまで用意して祝ってくれたこと、本当に嬉しかった。
人が人を思いやる気持ち以上に
人の心を感動させるものなんてないのかもしれない。
また一つ大切なことを教えてもらった気がします。

新庄FJCの皆さんとの話→2008年11月2009年11月

全9公演、お世話になった皆さま、聴いてくれた皆さま
本当にどうもありがとうございました。この先もずっと忘れることなく
大切なものとして心に残る素晴らしい日々の記憶をいただいたこと、とても感謝しています。

歯に衣着せぬ情熱むき出しの議論で音楽を少しでも良いものにしようとしてくれた
ツアーメンバー皆にも。ありがとうございました。

また明日から音楽を演奏するのが楽しみです。
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# by ken_ota | 2012-06-20 01:29

12.03.15 あれから1年の間に

ここ【NOTES】は前回よりひと月半ほど間が空いてしまいましたが
未だ朝晩は気温も低く春はもう少し先かな?という日々の続くなか
皆様いかがおすごしですか? 
僕は元気にサックスを吹いております。

ちょうど昨年の今頃は
東北〜関東に住む多くの人の生命や生活に支障をきたしていた頃で
多くの方が犠牲になってしまったあの忌まわしい3月11日を
今年は平穏無事に過ごし翌朝を迎えられたときは流石にほっと胸をなでおろしました。

しかし今なお避難所生活を続けられている方々や
大切な家族を失った悲しみを抱えながらも懸命に生きている方々のことを思うと
やりきれない気持ちでいっぱいになります。
一日も早く被災地が復興し
そこに住まう人々の生活が普通のシアワセに満ちあふれることを心から願っています。

自然の脅威はこんなにも多くのシアワセを一瞬にして奪ってしまうのだと
そういう大地の上に住んでいるのだということを
いま生きる多くの人の心に刻み込んだ1年前の震災では
自宅で生命の危機を感じるほどの恐怖を体験したものの
幸い当日予定されていたLIVE以外なにも失うことのなかった自分は
それまでにも増して本当に大切な何かを絞り込み絞り込み
これだと信じる道を突き進むようになった気がします。

気づいて、確信して、自分を変える、の繰り返しを重ねて
だいぶ前に進んだ実感を得ている今日この頃。
その音を今後のLIVEひとつひとつの尊い瞬間瞬間に
その空間に放って確実に残してゆきたいと思います。

3/27(火)は震災直後のツアーファイナルで出演したときから1年ぶりに
自分のリーダーQuartetで横浜・MotionBlueYokohamaに出演します。
今回は相棒、大槻カルタ英宣(drums)に加え
Soil&Pimp SessionsやJ.A.Mで活躍する
丈青(piano)&秋田ゴールドマン紀彰(bass)の二人を迎えて
かなりスリリングで魅惑的なサウンドになると思います。
きっと僕の想像をはるかに越えた何かが生まれるような気がして
いまから楽しみでなりません。

ぜひ聴いていただけたら嬉しいです。
皆様のお越しをお待ちしております。





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# by ken_ota | 2012-03-16 03:54

12.01.25 愛しき10年、からの新年2012

12.01.25 愛しき10年、からの新年2012_e0038558_2592283.jpg2012年になりまして、もう1月末。
こちら【NOTES】では
ろくすっぽ新年のご挨拶も出来ないままに
2月・3月のことも頭をよぎる始末ですが
皆様におかれましてはいかがおすごしでしょうか?

たいへん遅ればせながら
旧年中はたいへんお世話になりました。
本年もどうぞよろしくお願い致します。

ここのところの僕はといいますと
クリスマスや年越しといった年中行事も絡んでの
連日のライブ三昧ながら
瞬間瞬間を全力で生きて楽しむことに集中しすぎて
ひとつひとつの余韻をじっくり噛み締めたり
こちらでご報告したりもままならないまま
1月下旬まできてしまいましたが
その実、この年末年始には
涙腺にぐっときてしまうような
感慨深いことがありました。

僕が20代後半でジャズミュージシャンとしての人生を歩むきっかけとなったのは
大坂昌彦さんが自身のカルテットにレギュラーメンバーとして迎えてくれたことであるのは間違いなく
その少し後に日本に移り住んで来たトミー・キャンベルさんが結成した
日本での自身初のグループにもレギュラーメンバーとして参加させてもらうこととなって
この二人の誘いを受けられたという幸運は
音楽を学び成長してゆこうという経験浅く知名度もない新人サックス吹きの僕にとって
望んでもそう簡単には得られない恐れ多くも物凄いことでした。

2001年には大坂さんのバンドで数年一緒に演奏してきたベースの塩田哲嗣さんが渡米。
それに先立ち、当時のレギュラーメンバーで録音したのがCD「Reborn/大坂昌彦」で
その後も大坂さんのバンドで2005年くらいまで吹かせてもらいましたが
演奏する上で大切なことの多くは大坂さんの、演奏や言葉で教わったものだと感じています。

トミーさんのバンドでもジャズフェスや各地のコンサートに出演させてもらったりしました。
録音作品がないのは残念ですが、本国アメリカで伝説的ジャズメンから多くを学んだ彼の演奏には
常にスリリングとハッピーの二つが同居していて、この音楽で受け継がれてゆくそれらの伝統を
肌で感じ続けることが出来たことも、貴重すぎる体験でした。

大坂さんのバンドもトミーさんのバンドも
今は全く異なるメンバーでまた新たに先に進み続けていますが
参加し始めたときから数えて、ともに10年強の時間が過ぎた今この時に同じタイミングで
二つのバンドの当時のメンバー全員が揃った「リユニオン」LIVEがあったのは
個人的にとても感慨深いものでした。

ともに発起人はベーシスト。塩田さんは自らの渡米10年を総括し原点を噛み締めるために
高梨道生さんは、若き頃バークリーで一緒に切磋琢磨したトミーさんが
13年の日本での活動に終止符を打ちアメリカに帰国することへのメモリアルとして
それぞれ一緒にがんばっていた仲間を全員集めてくれたのです。

集まってみると懐かしいメンバーですが
演奏しているときは、懐かしさよりも
全員の音楽的成長から新たにいまここで生まれている音に集中していて
終わってみると、もっとこのメンバーでの演奏がしたいという気持ちしかありませんでした。
と、同時に、月に何度もこれらのバンドで演奏していたあの頃の自分が
無性に羨ましくもなったり、その頃は精一杯努力していたはずなのに
10年後の自分から見れば、まだまだやれることがあったろうと歯がゆく思えたり。

でもそうして、いまの自分も新たなステージに向かっていることを考えると
10年すごした自分のジャズ人生がとても愛おしく
大切な時間だったなと思えるようにもなりました。

来年や、また10年後の自分が歯がゆい思いをすることのないよう
今年も目一杯、全力で頑張ってゆきたいと思います。

これからもどうぞよろしくお願いします。

【近日LIVE情報】

2/1(水)関内・KAMOME 太田剣Quartet:熊谷ヤスマサ(p)川村竜(b)大槻カルタ英宣(ds)
2/3(金)名古屋・DOXY  太田剣Quartet:熊谷ヤスマサ(p)川村竜(b)河村亮(ds)

みなさまのお越しをお待ちしております!       


                              2012年1月 太田 剣


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# by ken_ota | 2012-01-25 02:50

11.12.7 板橋文夫さんを聞いた日

11月25日、御茶の水NARU。

石井彰さん(piano)俵山昌之さん(bass)池長一美さん(drums)という
先輩3人を迎えた僕のカルテットでのLIVEは
全てが自由なのに全てがパズルのようにハマってゆく
未だかつて味わったことのないような瞬間瞬間のフックのすさまじさに
先輩方の底知れぬ音楽への洞察力と表現力を見せつけられ
これから先に進むべき道への希望すら与えられたと思えるほど
感動したのでした。また再演お願いしたいことこの上ない気持ちです。

11月26日、鹿児島おおすみジャズストリート初日。

一夜明けて飛行機で鹿児島へ。
昨夜の興奮冷めやらぬまま向かった羽田空港で
日野皓正さんバンドで同フェスに出演する石井彰さんや、
5Cats仲間の日野JINO賢二、TheFORCE仲間の須川崇志クンらに再会。
数年ぶりに来た志布志市の町はどこか懐かしく、暖かい気持ちになったな。
その夜は和香園というお茶屋の素敵な蔵でハクエイキムとDUO。
この蔵の響きがまたなんとも素晴らしく、サックスとグランドピアノが織りなす音世界が
内省的に深く広がってゆくような、とても心地よい体験をしました。
いただいたお茶も美味。またぜひ来たい場所です。

11月27日、鹿児島おおすみジャズストリート二日目。

志布志を出発してこの日は鹿屋での演奏。
水辺に設営されたステージは石畳を前に、流れる水路を背にいい空間で
道行く人も足をとめるような、そうだ、円形のすり鉢上に客席があるこの感じ、
デトロイトJazzFes.のJCハードオーケストラを見たあのステージにちょっと似てる。
前夜とは明らかに異なる音空間、こちらでは自分の音の響きの座るポイントをつかむのに
少し手こずったけれど、何かを執拗に求めるその意志は演奏にいい影響を与えていたようす。
聞き終えた方からの音への賛辞は演奏中は予想外のことだったので嬉しかったな。

自分たちの出番が終わって、同会場でのトリ、板橋文夫FITのステージを聞く。
最初の一音から、何もかもが違った。
今まで聞いて来たものではない、それは板橋文夫さんというアーティストが
キャンバスに一心不乱に絵を描きなぐるような
時に激しく時に優しく懇切丁寧に、共演する二人の若いアーティストの音を重ねながら
とまることなくどんどん表現を抽出してゆく。溢れんばかりの思いを。自分の心の中にあるものを。
自分以外の何かであろうとしない、表現する自分たちがそこで音を出すこと以外の
何物にも左右されない、自らを懸けた強い意志を全力でいまこの瞬間にぶつけてゆく。
人種も、生まれも、国も、場所も、時間も、時代も、何も関係なかった。
そんな素晴らしい演奏をやり遂げた板橋さんは、人間力を大いに消耗してふらふらになりながら
ステージを降りたように見えた。 本当に凄いものを、見せて、聞かせていただきました。
ありがとうございます。

11月28日、熊本KKRホテル。

今年2度目の熊本KKRホテルでの演奏。通算3度目。いつ来てもここは最高に気持ちいい。
徒歩1分のところにそびえ立つ熊本城のパワーがふり注いでいるに違いない。おそらく。
ハクエイ君とのDUOはいつも本当に充実しているのだけれど
二人とも前日に板橋さんを体験していることが無関係とは思えない
深く覚悟を決めて音楽に対峙する姿勢で演奏に臨んでいたはず。
そしてそれは当然の如く、自分たちも、そして聞いていただいた方々の心にも
深く強く響いたようで、とても大切なことを教えられたのだと感じた
忘れられない一夜となりました。皆さん本当にありがとうございました。

年内あと少しですが、一日一日、全力で向かいたいと思います。

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# by ken_ota | 2011-12-07 01:40